親のことを考えると、気持ちが重くなる。
連絡が来るだけで、少し緊張する。
本当は距離を取りたいのに、そう思う自分に罪悪感がある。
大人になった今も、親から何か言われると、自分の気持ちより親の反応を優先してしまうことがあります。
そんな親子関係について調べるうちに、
「もしかして、うちの親は毒親なのかな」
という言葉にたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。
けれど同時に、
「育ててもらったのだから」
「もっと大変な家庭もある」
「私が気にしすぎなのかもしれない」
そんな気持ちも浮かんでくる。
親を大切にしたい気持ちと、親との関係から少し離れたい気持ち。
その両方があるからこそ、自分でも何がつらいのか分からなくなることがあります。
ここでは、「毒親」という言葉だけで親子関係を決めるのではなく、その関係の中で、自分が何を感じ、どんなふうに過ごしてきたのかを丁寧に見ていきます。
「毒親かもしれない」と感じるのは、どんなときでしょう
「毒親」という言葉は、親子関係のつらさを表す言葉として広く使われています。
医療上の診断名とは異なり、「この特徴があれば毒親」と一律に決められるものではありません。
大切なのは、親をどの言葉で表すかよりも、親との関係の中で、自分がどんな状態になっているのかを見ていくことです。
親の機嫌や反応をいつも気にしている
何かを決めるとき、
「親はどう思うだろう」
と先に考える。
親の機嫌が悪いと、自分が何かしたのではないかと気になる。
自分の考えを伝える前に、親が嫌な気持ちにならない言い方を探してしまう。
子どもの頃からそうしたことが続いていると、大人になってからも、親の反応を確認しながら行動することが自然になっている場合があります。
否定された言葉が、今も心に残っている
「そんなこともできないの」
「あなたは昔からそう」
「誰のおかげでここまで来られたと思っているの」
言われたのはずいぶん前なのに、ふとしたときにその言葉がよみがえることがあります。
そして何か失敗すると、
「やっぱり私はダメなんだ」
と、親から言われた言葉を自分自身に向けるようになることもあります。
自分の人生なのに、親の許可が必要なように感じる
仕事、結婚や離婚、住む場所、子育て、お金の使い方。
本来は自分で決められることでも、親にどう思われるかが気になり、決断しにくくなることがあります。
「親が反対するならやめた方がいいのかな」
「自分だけ幸せになっていいのかな」
そんなふうに、自分の人生と親の気持ちの境目が分かりにくくなることもあります。
距離を取りたいのに、罪悪感がある
会う回数を減らしたい。
電話にすぐ出たくない。
すべてを報告したくない。
そう思っていても、
「親なのに」
「冷たいと思われる」
「年を取っているのだから大切にしなければ」
という気持ちが出てくることがあります。
距離を取りたい気持ちと、大切にしたい気持ち。
その間で揺れ続けることも、親との関係で感じるつらさの一つです。
親への気持ちは、一つに決められないことがあります
親との関係がつらくても、親への気持ちがすべて否定的になるとは限りません。
感謝しているところもある。
楽しかった思い出もある。
助けてもらったこともある。
それでも、傷ついたこともある。
分かってほしかったこともある。
今も苦しくなる関わり方がある。
こうした異なる気持ちが同時にあるからこそ、
「結局、親は良い親なのか悪い親なのか」
と考え続けてしまうことがあります。
親を一つの評価にまとめなくても、**「私は、このことで傷ついていた」**と、自分自身の経験に目を向けることはできます。
子どもの頃に身につけた関わり方が、今も続くことがあります
子どもにとって、親との関係はとても大きなものです。
親の機嫌を損ねないようにする。
できるだけ心配をかけない。
期待に応える。
嫌なことがあっても我慢する。
自分より親の気持ちを優先する。
そうすることで、家庭の中で自分なりに関係を保ってきた人もいるでしょう。
その頃に身につけた関わり方が、大人になった今も人間関係の中に残ることがあります。
たとえば、相手の顔色を見すぎる。
嫌なことを断れない。
人に頼るのが苦手。
相手に嫌われることが怖い。
自分より誰かを優先してしまう。
そうした現在の生きづらさと、親子関係の中で身につけてきたものがつながっていることがあります。
「昔のことなのに」と思っても、心が反応することがあります
もう大人になった。
親とは別に暮らしている。
昔ほど関わっていない。
それでも、親の一言で強く落ち込んだり、子どもの頃のような気持ちに戻ったりすることがあります。
頭では、
「もう親の言う通りにしなくてもいい」
と分かっている。
けれど、気持ちは同じ速さでは変わらないことがあります。
過去に感じた寂しさや怖さ、分かってほしかった気持ちが、現在の出来事と重なって心が反応することもあります。
母との関係、父との関係では、苦しさの形が違うこともあります
親との関係について考えるとき、母との関係が強く心に残っている方もいれば、父との関係に難しさを感じている方もいます。
母との距離が近すぎて、自分の人生まで入り込まれているように感じる。
母の期待に応えることを優先してきた。
父の怒りや威圧的な態度が怖かった。
父から認めてもらえなかった感覚が残っている。
家庭によって、親子関係の形はさまざまです。
具体的な関係についてはこちらでもお伝えしています。
親との距離は、自分に合う形を考えていくことができます
親との関係が苦しくなると、
「縁を切った方がいいのかな」
「連絡を断った方がいいのかな」
と考えることがあります。
一方で、関係を完全に切りたいわけではない。
親の年齢や生活も気になる。
家族とのつながりもある。
できることなら、少し楽な関係になりたいという方もいます。
大切なのは、最初から一つの答えを決めることより、自分にとって、どのくらいの距離なら心を保ちやすいのかを考えていくことです。
毎回すぐに電話に出るのか。
話したくないことまで話すのか。
頼まれたことを全部引き受けるのか。
会う頻度をどうするのか。
一つひとつ見ていくと、自分で選べる部分が少しずつ見つかることがあります。
親のことを考えながら、自分の気持ちにも目を向けていく
親とのことを誰かに話したとき、
「親だって大変だったんじゃない?」
「もう昔のことだから」
と言われた経験のある方もいるかもしれません。
親にも、その人なりの事情や背景があったのでしょう。
そのことを理解することと、自分が何を感じていたのかを知ることは、どちらも大切にできます。
寂しかった。
怖かった。
認めてほしかった。
もっと話を聞いてほしかった。
自由に選ばせてほしかった。
そうした自分の気持ちを、自分自身が少しずつ理解していくことで、今の自分への見方が変わっていくことがあります。
カウンセリングでは、「毒親かどうか」よりも今のつらさから見ていきます
カウンセリングでは、親に「毒親」という判定をつけることを目的にはしていません。
まず、今、親との間で何が起きているのか。
親と関わると、どんな気持ちになるのか。
子どもの頃、どんなふうに過ごしていたのか。
そして、その経験が、今の人間関係や自分自身への見方にどうつながっているのか。
そうしたことを、現在のつらさから少しずつ整理していきます。
今起きていることを具体的に整理する
親から連絡が来るとつらい。
会うたびに傷つく。
断りたいのに断れない。
何か言われると何日も引きずる。
まずは、現在起きている具体的な出来事から見ていきます。
親との間で繰り返してきたパターンを見る
親が不機嫌になる。
自分が合わせる。
言いたいことを飲み込む。
あとから苦しくなる。
それでもまた、親の期待に応えようとする。
こうした繰り返しが見えてくると、
「なぜいつも同じところで苦しくなるのだろう」
と感じていたことに、少しずつ輪郭が見えてくることがあります。
今の自分に合う距離を考える
親との関係をどうしていくかは、人によって違います。
関係を続けながら距離を調整する人もいます。
伝え方を変えてみる人もいます。
会う頻度を減らす人もいます。
しばらく離れて、自分の気持ちを整理する人もいます。
大切にするのは、今の自分が安心して暮らせる関わり方を見つけていくことです。
親との関係を、自分の人生の中で整理していくために
「毒親なのかどうか」
その答えを探していたはずなのに、考え続けるうちに、ますます分からなくなることがあります。
そんなときは、親がどんな人だったのかだけではなく、
自分は何を感じてきたのか。
今、何に苦しんでいるのか。
これからどんな距離で生きていきたいのか。
そこへ視点を戻してみることもできます。
親との関係は、自分の人生の一部です。
そして大人になった今、これからの関わり方を少しずつ選んでいくこともできます。
ご相談は、心理カウンセラー柴垣友佳里がお受けしています。
うまく整理してから話す必要はありません。
「親のことで、ずっとモヤモヤしています」
そんなところからでも、お話しいただけます。
