カサンドラ症候群かもしれないと感じるとき

同じ家で暮らしている。
必要な会話もしている。
家族としての日常も続いている。

それなのに、何か大切なところで、ずっと一人でいるように感じることがあります。

「今日はこんなことがあった」と話しても、思っていたような反応が返ってこない。

つらかった気持ちを伝えても、事実について説明されたり、「じゃあ、こうすればいい」と解決策が返ってきたりする。

欲しかったのは答えよりも、
「それはつらかったね」
というひと言だったのに。

そんな毎日について調べるうちに、「カサンドラ症候群」という言葉にたどり着く方がいます。

その言葉を見て、「これなのかもしれない」と感じることもあれば、「でも、相手に診断があるわけではないし」と迷うこともあるでしょう。

ここでまず見ていきたいのは、相手にどんな診断名がつくかということよりも、二人の間で何が繰り返され、その中で自分がどんなふうに疲れてきたのかということです。

話しているのに、「届いていない」と感じる

夫婦の会話がまったくないわけではない。

けれど、自分が一番分かってほしいところだけが、なぜか伝わらない。そんな感覚が続くことがあります

気持ちを話すと、事実の話に戻ってしまう

「今日は大変だった」と話したら、「でも、それは仕方ないんじゃない?」と返ってくる。

「寂しかった」と伝えたら、「そんなつもりはなかった」と説明される。

言っていることは間違っていない。けれど、自分が話したかったこととは、少し違う。

そんな小さなずれが繰り返されると、
「どう言えば分かってもらえるんだろう」
と、伝える側ばかりが言葉を探すようになることがあります。

夫婦の間で起きるこうしたすれ違いについては、こちらでも詳しくお伝えしています。

▶ 夫婦のコミュニケーション

お願いしたことはしてくれる。でも、なぜか寂しい

家事をしてくれる。
仕事もしている。
約束したことは守ってくれる。

周囲から見れば、特に問題のない夫婦に見えることもあります。

だからこそ、自分でも、
「これ以上、何を求めているんだろう」
と分からなくなることがあります。

困っているのは、何かを「してくれない」ことだけではないのかもしれません。

自分の気持ちが、相手の中に届いたと感じられない。

その寂しさが、少しずつ積み重なっていることがあります。

外から見える夫婦と、自分が暮らしている夫婦が違う

カサンドラという言葉に強くひかれる方の中には、周囲に夫婦の苦しさを分かってもらいにくい方もいます。

仕事ではきちんとしている。
友人には感じがいい。
子どもの行事にも参加している。

そのため、誰かに夫婦のことを話しても、
「いい旦那さんじゃない」
「そんな人、どこの家にもいるよ」
と言われることがあります。

すると今度は、
「私が細かすぎるのかな」
「求めすぎなのかな」
と、自分の感じ方まで疑い始めることがあります。

周りから見える姿と、二人の間で自分が感じていることは、同じとは限りません。

人に説明しにくい苦しさほど、長い間、自分の中だけに置かれてしまうことがあります。

「夫がASDなのでは」と考え始めたとき

会話がかみ合わない理由を探しているうちに、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴について知ることがあります。

そして、
「夫はASDなのではないか」
「だから私はこんなに苦しいのではないか」
と考えるようになることもあります。

「カサンドラ症候群」は、一般に、発達特性のあるパートナーとの関係の中で孤独や疲れを抱える状態を表す言葉として使われています。

ただ、パートナーに医療機関での診断がない場合、身近な人だけでASDと判断することはできません。

大切なのは、診断名だけを二人の関係の答えにしないことです。

実際の暮らしの中で、どこですれ違っているのか。どんな場面では分かり合えるのか。

どんなやり取りになると、いつも同じところで止まってしまうのか。

そこを見ていくことで、診断名だけでは捉えきれなかった二人の関係が見えてくることがあります。

ASDそのものについて知りたい方はこちらをご覧ください。

▶ ASD(自閉スペクトラム症)に関するご相談

いつの間にか、自分が「通訳役」になっている

相手がどう受け取るかを考えてから話す。怒らせない言い方を選ぶ。

子どもには父親の意図を説明し、夫には子どもの気持ちを説明する。

家族の予定を調整し、人間関係の行き違いが起きないように、先回りして間をつなぐ。

気づけば、家庭の中の感情や関係を調整する役割を、一人で引き受けていることがあります。

相手に悪気がないことも分かっている。

だからこそ、「もうできない」と言うことにも、罪悪感が出てくることがあります。

けれど、相手を理解することと、家族の間にあるものをすべて引き受けることは同じではありません。

「いつの間にか、自分ばかりが関係を支えている」

そんな感覚があるなら、そこには少し立ち止まって見てみたいものがあります。

相手を理解するうちに、自分の気持ちを後回しにしていないでしょうか

「相手には、こういう特性があるのかもしれない」

そう考えることで、それまで理解できなかった言動に少し納得できることがあります。

相手にも悪気はないのかもしれない。
苦手なことを求めすぎていたのかもしれない。

そうやって相手を理解しようとすることは、大切なことでもあります。

けれど、その理解がいつの間にか、

「だから私が合わせなければ」
「分かってもらえないのは仕方がない」
「私が我慢すればうまくいく」

というところまで進んでしまうことがあります。

相手の感じ方を理解することと、自分の寂しさや苦しさをなかったことにすることは、同じではありません。

「私はあのとき寂しかった」
「ずっと一人で頑張っているように感じていた」
「本当は、気持ちを分かってほしかった」

そんな自分の側にある気持ちも、同じように大切です。

「カサンドラ症候群」という言葉が、相手を分類するためではなく、これまで後回しにしてきた自分の疲れに気づく入口になることもあります。

「カサンドラなのか」より、今の自分に何が起きているのかを見てみる

「私はカサンドラ症候群なのでしょうか」

そこが気になって、このページを読んでいる方もいらっしゃると思います。

長い間うまく説明できなかった苦しさに、「カサンドラ」という言葉が重なることで、

「私が感じていたことには、理由があったのかもしれない」と思えることもあります。

けれど、名前が分かっただけでは、毎日の関係がすぐに変わるわけではありません。

また話して、うまく伝わらない。
また自分が説明する。
また相手の気持ちを想像して、自分の気持ちは後回しになる。

そんな日々が続いているなら、まず見てみたいのは、

自分は、この関係の中でどんな気持ちで過ごしてきたのか。
どこで一番疲れているのか。
何をずっと分かってほしかったのか。
これからも自分が引き受け続けたいことと、もう引き受けたくないことは何なのか。

ということです。

相手を理解することから少し離れて、自分の側に起きていることを言葉にしてみる時間が必要になることがあります。

夫婦のことでも、まずお一人で相談できます

夫婦の問題だから、
「二人でカウンセリングを受けなければ意味がないのでは」と思われることがあります。

けれど、カサンドラかもしれないと感じている方の場合、まずお一人でお話しいただくことができます。

相手に診断がある必要もありません。

「夫がASDかどうか分からない」
「自分が求めすぎているのかもしれない」
「何がつらいのか、自分でもうまく説明できない」

という段階からでも大丈夫です。

カウンセリングでは、相手を診断したり、一方を悪い人と決めたりするのではなく、

これまで二人の間で何が起きてきたのか。
どんなときに特につらくなるのか。
自分がどこまで関係を支えようとしてきたのか。
本当は何を望んでいたのか。

そんなことを一つずつ整理していきます。

話してみる中で、

「私はずっと寂しかったんだ」
「分かってもらうために、ずっと頑張っていたんだ」
「相手のことばかり考えて、自分がどうしたいのかを考えていなかった」

と、それまで言葉にならなかった気持ちが見えてくることもあります。

安全面に心配がなく、お二人とも希望される場合には、その後、夫婦・カップルカウンセリングを考えることもできます。

▶ 夫婦・カップルカウンセリングについて

関係を続けるかどうかまで迷い始めているときは

長く苦しい状態が続くと、
「このまま一緒に暮らしていけるのだろうか」
「離れた方がいいのだろうか」
と考えることもあります。

その一方で、
「できれば関係を壊したくない」という気持ちが残っていることもあります。

このページでは、どちらかの結論へ急いで進むことはしません。

離婚や別居そのものについて考えることが中心になってきた方はこちらをご覧ください。

▶ 離婚・別居を考えているとき

また、相手の反応が怖い、強い威圧や支配を感じる、行動や金銭を制限されているなどの場合には、一般的な夫婦のすれ違いとは分けて、安全を優先して考える必要があります。

▶ 夫の言葉や態度が「モラハラかもしれない」と感じるとき

一緒にいるのに、ずっと一人で頑張っているように感じるときに

相手には悪気がないのかもしれない。
自分にも至らないところがあるのかもしれない。

そう考えながら長く過ごしてきたからこそ、
「私がつらいと言っていいのだろうか」と迷うこともあると思います。

けれど、誰が悪いのかを決めなくても、
「私は、この関係の中でずっと孤独だった」という気持ちについて話すことはできます。

相手を変える方法を探す前に、まず自分が何を感じながらここまで過ごしてきたのかを、一度ゆっくり言葉にしてみる。

そこから見えてくることもあります。

ご相談は、心理カウンセラー柴垣友佳里がお受けしています。

オンラインでは全国からご相談いただけます。

対面をご希望の方には、愛知県・岐阜県の対応地域や名古屋市などでお受けしています。

このテーマについては、まずお一人でお話しいただくことができます。

個人カウンセリングは、90分 11,000円(税込)です。

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