親が年を重ねるにつれ、少しずつ手伝うことが増えていくことがあります。

病院への付き添い。
買い物や食事の準備。
役所や介護サービスの手続き。
何度もかかってくる電話。

離れて暮らしていれば、何か起きていないかという心配もあります。

最初は「これくらいなら」と思っていたことが、一つ、また一つと増えていく。
気がつくと、仕事や自分の家庭の予定を調整しながら、いつも親のことを考えている。
そんな毎日になることがあります。

親を大切に思う気持ちがあっても、疲れることがあります。
優しくしたいのに、強い口調になってしまう日もあります。
「もう少し自分でやってほしい」と思った直後に、そんなことを思った自分が嫌になることもあります。

介護をする中で生まれる気持ちは、一つではありません。
ここでは、介護の仕方そのものではなく、親を支える側になったときの心の負担について考えていきます。

いつからこんなに疲れていたのか、分からなくなることがあります

介護の負担は、ある日突然始まるとは限りません。

最初は月に一度の通院だった。
それが週に一度になった。
買い物も頼まれるようになった。
薬の確認が必要になった。
書類も自分が見るようになった。

一つひとつなら、それほど大きなことではないように見えるかもしれません。
けれど、それらが長く続くと、生活の中にいつも「親のこと」が入っている状態になります。

今日は何か連絡が来るだろうか。
薬は飲んだだろうか。
次の病院はいつだったか。
今度は何を頼まれるだろう。

実際に介護をしている時間だけではなく、気持ちのどこかでずっと親のことを気にしている時間も、少しずつ疲れにつながっていきます。

親に腹が立つ自分に、戸惑うことがあります

何度説明しても同じことを聞かれる。
できないことが増えているのに、「自分でできる」と言われる。
必要な支援を勧めても嫌がられる。
こちらにも予定があるのに、当然のように頼まれる。

そんなことが続けば、苛立つことがあります。

けれど相手が年老いた親だからこそ、
「こんなことで怒ってはいけない」
「親も好きでこうなったわけではない」
「もっと優しくしてあげなければ」
と、自分の気持ちを抑えようとすることもあります。

そして、強く言ってしまったあとには、
「かわいそうなことをした」と後悔する。

疲れる → 苛立つ → 自分を責める → また頑張る

そんな繰り返しになっていることもあります。

親への苛立ちがあることと、親を大切に思っていないことは同じではありません。
長く支え続けているからこそ、さまざまな感情が出てくることがあります。

「親なのだから、自分がやらなければ」と思うとき

ほかにできる人がいない。
自分が一番近くに住んでいる。
長女だから。
今まで親にしてもらったことがあるから。
きょうだいより、自分の方が時間を調整しやすいから。

いろいろな理由から、
「結局、自分がやるしかない」という形になっていることがあります。

最初は納得して引き受けたことでも、年月が経つにつれて、自分の仕事や家庭、体力も変化していきます。
それでも以前と同じように続けようとすると、無理が生じることがあります。

「できるか、できないか」だけではなく、今の自分が、どこまでなら続けられるのかを考えることも、介護を続けていくための大切な視点になります。

きょうだいとの負担の違いが、心に残ることがあります

介護が始まると、それまでとは違う形できょうだいとの関係が見えてくることがあります。

自分ばかり病院に付き添っている。
連絡をしても、「任せるよ」と言われる。
口は出すのに、実際には動いてくれない。
遠くに住んでいるきょうだいには、日々の細かな大変さが伝わらない。

そんな状況が続けば、
「どうして私ばかり」という思いが出てくることがあります。

一方で、
「仕事が忙しいのだから仕方がない」
「遠くにいるのだから頼めない」
と、自分でその気持ちを引っ込めてしまうこともあります。

介護では、目に見える作業だけでなく、

予定を覚えておくこと。
連絡を取ること。
判断すること。
心配し続けること。

といった、外からは見えにくい負担もあります。

そのため、「同じ家族なのに分かってもらえない」という寂しさが、介護そのものの疲れとは別に残ることがあります。

自分の家庭や仕事まで、少しずつ圧迫されていく

親のことを優先するために、予定を変更する。
仕事を休む。
自分の病院や用事を後回しにする。
休日も実家へ行く。
家に戻れば、自分の家庭のことが待っている。

こうして、親を支える役割と、自分自身の生活が同時進行になります。

特に50代、60代になると、親の介護だけではなく、

自分自身の体力の変化。
仕事上の責任。
夫婦関係。
子どものこと。
これからの自分の人生。

さまざまなことが重なる場合があります。

その中で、親のことだけは待ってくれない。
そんな感覚になることもあります。
「少し自分の時間がほしい」と思うことさえ、贅沢なように感じる方もいます。

けれど、介護をする人にも、その人自身の暮らしがあります。

親を支えることと、自分の人生を生きることの間を、どう整えていくか。
これは介護を続ける中で、とても大きなテーマになることがあります。

離れていると心配、近くにいると疲れることもあります

親との距離には、難しさがあります。

離れて暮らしていると、
「何かあったらどうしよう」と心配になる。

頻繁に様子を見に行けば、今度は自分が疲れる。

少し距離を取ろうとすると、
「冷たいのではないか」と罪悪感が出てくる。

近づいても苦しい。
離れても気になる。

そんな状態になることがあります。

距離を取ることは、「親を見捨てること」と同じではありません。
一方で、「離れればすべて解決する」とも限りません。

その方の生活や親の状況、利用できる支援などによって、ちょうどよい距離は違います。

どのくらい関われば、自分も親も無理が少ないのか。
それをその時々で考え直していくことができます。

介護をすると、昔の親子関係が再び動き出すこともあります

このページの中心は、今の介護負担です。
ただ、親を支える生活が始まったことで、昔の親子関係が再び心に浮かんでくることがあります。

子どもの頃、厳しかった父。
いつも自分を頼ってきた母。
認めてもらえなかった思い。
もっと優しくしてほしかった気持ち。

その親が年を取り、今は自分を頼っている。

すると、
「これまでいろいろあったのに、なぜ私が」
という思いが出てくることもあります。

反対に、
「今こそ自分が返さなければ」
という気持ちが強くなることもあります。

昔からの親子関係そのものを整理したい場合には、こちらのページがあります。

▶ 母との関係に疲れてしまうとき

▶ 父との関係が苦しいとき

介護をきっかけに過去の思いが動き始めた場合には、今の負担と、昔からの気持ちを分けながら見ていくこともできます。

自分のために何かすると、罪悪感が出てくるとき

今日は実家へ行かずに休みたい。
旅行に行きたい。
友人と出かけたい。
介護サービスに任せたい。
施設への入所を考えたい。

そんなことを思ったとき、
「自分だけ楽しんでいいのだろうか」
「親を人に任せるなんて」
「もっとできることがあるのでは」
と罪悪感が出てくることがあります。

けれど、介護をする人が自分の生活を持つことと、親を大切にすることは、必ずしも反対ではありません。

介護には長い時間がかかることがあります。
その中で、自分が続けられる形を考えることも必要になります。

罪悪感そのものが強く、自分を優先するたびに「相手に悪い」と感じる方は、こちらのテーマともつながります。

▶ 罪悪感が強くなってしまうとき

「全部自分でやる」以外の形を考える

介護については、家族だけで抱えるものではありません。
介護保険サービスやケアマネジャー、地域包括支援センターなど、実際の生活を支えるための専門的な支援があります。

カウンセリングは、そうした介護サービスの代わりになるものではありません。
必要な介護そのものについては、介護・福祉の専門機関と相談していくことが大切です。

その一方で、
「人に任せると申し訳ない」
「家族なのだから、自分がしなければ」
「頼んだとしても、自分が確認しなければ安心できない」
という気持ちが強く、支援があっても自分で抱え続けてしまうことがあります。

そんなときには、
何を自分が担いたいのか。
何なら人に任せられるのか。
本当は何に一番疲れているのか。
を整理していくことができます。

支援を使うことと、親を大切に思うことも、両立していくことができます。

親の状態が変わるたびに、気持ちも揺れることがあります

昨日までできていたことが、できなくなる。
同じことを何度も聞くようになる。
歩く速度が遅くなる。
入院する。
退院しても、以前と同じ生活には戻らない。

親の老いを目の前で見ることは、介護の作業とは別のつらさを伴うことがあります。

「前はこんな人ではなかった」と思う。
以前の元気な姿を思い出す。
これからもっとできないことが増えるのではないかと考える。

介護をしながら、少しずつ変わっていく親を見ていると、まだ一緒に暮らしていても、以前の親を少しずつ失っていくような寂しさを感じることがあります。

苛立ちだけでも、悲しみだけでもない。
安心する日もあれば、先のことを考えて怖くなる日もある。

介護の中では、そうしたさまざまな気持ちが行き来することがあります。

これからどこまで続くのだろう、という不安

介護には、終わりや見通しが見えにくいことがあります。

来月どうなるのか?
半年後は?
もっと介護が必要になったら?
自分が病気になったら?
仕事を続けられなくなったら?

考え始めると、先のことまで全部背負っているような気持ちになることがあります。
けれど、今の時点ですべてを決めることはできません。

親の状態も変わります。
利用できる支援も変わります。
自分の生活も変わっていきます。

今必要なことと、まだ起きていないことを分けながら、その時点でできることを考えていく。
それだけでも、先のすべてを一人で背負っている感覚が少し変わることがあります。

カウンセリングでは、介護する側の気持ちを話せます

介護について人に話すと、
「親御さんも大変ね」と言われることがあります。

もちろん、親自身も大変です。
けれど、その言葉を聞くたびに、
「介護している私がつらいと言ってはいけないような気がする」という方もいます。

カウンセリングでは、親の立場だけではなく、今、介護を担っているご本人の気持ちをお話しいただけます。

親に腹が立つこと。
もう行きたくないと思うこと。
兄弟姉妹への不満。
施設を考えることへの迷い。
「早くこの生活から解放されたい」と思ってしまったこと。

そうした気持ちも含めて、今何が一番負担になっているのかを整理していきます。

介護をどうするかという実務的な答えをカウンセラーが決めるのではなく、

自分は何を担い、何を手放したいのか。
親との関係をどんなふうに保ちたいのか。
自分自身の暮らしを、どのように守っていきたいのか。

一緒に考えていく時間です。

▶ 個人カウンセリングについて

親を支える自分の生活も、同じように大切にする

介護をしていると、親の予定から一日が始まることがあります。

親が今日はどうしているか。
次の通院はいつか。
何をしてあげなければならないか。

そんなことを考える時間が増えるほど、自分のことは後ろへ回りやすくなります。

けれど、介護をしている人にも、その人自身の一日があります。
仕事があり、
家族があり、
身体があり、
これからの人生があります。

親を大切にすることと、自分自身の生活を大切にすること。
その二つの間で、今の自分にできる形を探していく。

介護が続いている間にも、少しずつ考えていくことができます。

ご相談は、心理カウンセラー柴垣友佳里がお受けしています。

「親の介護の話なのに、自分の気持ちを話していいのだろうか」という段階からでもお話しいただけます。

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